海外企業とのM&Aを考えた時、率直な疑問として浮かぶのは「どのようにして成立するのか?」ではありませんか?海を隔て、言葉や習慣の異なる異国の地で、自分たちの希望通りの企業を見つけるなんて途方もない確率に思えることでしょう。ここでは海外進出のパートナーを見つける方法や、国内のM&Aとの違いについてお伝えしていきます。

プロセス・1策定と立案

海外M&Aは必ず成功して利益をもたらす魔法の手段ではありません。海外M&Aすることが目的となってしまっている事例も多々見られますが、その場合迷走や失敗に終わる確率がグンと高まります。そのため、最初の段階で技術提携契約や長期の基本契約、販売提携でなくM&Aでないと達成しない目標なのかを多角的に精査することから始めましょう。海外企業との連携といえば華々しいですが、その成功率は実に20%程度と茨の道です。

プロセス・2実行可能性調査

海外M&Aでしか得られない目標が定まったら、買収する国や企業の検討に入ります。その前に「このM&Aは本当に実施できるのか?」を調査し、リスクを減らしていきましょう。具体的には、国によって異なるカントリーリスク調査や法令調査、市場環境調査など進出できる場所であるかを調査します。もちろん、贈収賄リスクなど足元をすくわれかねない問題についても慎重に調べる必要があります。その結果、国が絞り込めれば買収やパートナー候補の調査へと移ります。

プロセス・3現地パートナーの選考

数ある企業の中からもっとも自社の海外進出に適した企業を選定する作業に移ります。仲介業者にリスト制作を依頼し、アプローチを始めるのが一般的で、その国や業種に精通した業者選びが必要となります。交渉は英語で行われるのが一般的ですが、同じ単語でも国によってニュアンスが異なり、単に海外に精通しているだけでは交渉は難しいといえるでしょう。現地に拠点がある、実績があるといった仲介業者を選ぶことをおすすめします。現地パートナーとなるポイントとしては、そもそも買収を受け入れるつもりがあるのかという基本的なものから、報酬の算出方法や期間など細かい点についても注意が必要です。

プロセス・4秘密保持契約

ターゲットが決まったらアプローチを開始し、相手が乗り気であれば買収に向けた協議が開かれます。ですが、その前に情報漏えい対策として秘密保持契約の締結が必要です。訴訟等の紛争や資産など企業の大切な情報を相手企業に開示することもあるため、情報を目的外での使用を禁止し、情報の返還や破棄を速やかに行うといった項目が並びます。この時、売り手に有利な違約金条項が盛り込まれることもあるため、隅々までしっかりとチェックしておくこともトラブル防止策として大切です。

プロセス・5情報交換の開始

秘密保持契約が結ばれたら情報交換を開始し、買収スキームについても意見を交わします。買収価格や権利関係についてもこの席で話し合われる重要なポイントです。

プロセス・6基本合意書

お互いに合意が得られればM&Aに向けた基本合意書を作成します。内容は最終的に両者が合意した内容で作成されますが、具体的には

  • 買収対象資産
  • 買収スキーム
  • 買収対価
  • 買収完了までのスケジュール
  • 独占交渉権
  • デューデリジェンス実施事項
  • 秘密保持義務

などが一般的です。

プロセス・7デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは”問題を明らかにするための詳細な調査”を意味し、省略して”DD”と呼ばれることも多いですね。基本合意書で実施が決まっているDDを調査しますが、一般的には会計や税務、法務、コンプライアンス、環境などが対象となります。ここで判明した問題については許容範囲であるか、買収金額から差し引くべき事由なのか、M&Aを断念するほどの事由なのかを精査します。

プロセス・8最終契約締結

DDの実施を終えてからという場合もありますが、並行して最終の契約交渉を行う場合もあります。最終契約書を作成して誤りがないか確認しますが、国によっては英語だけでなくローカル言語での書類も必要となるため注意が必要です。英語と同じ内容と思わず、こちらも徹底してチェックすることが大切です。

プロセス・9クロージング

契約内容を確認したら、経営権の移転を行うクロージングへと進みます。その際に取引実行条件(CP)をさらに細く設定することが求められますが、内容としては表明や契約締結日など重要なポイントが嘘偽りなく正確であることや、誓約を遵守しているかといった項目です。つまり、お互いにフェアなクロージングになるようさらに確認事項をチェックする仕組みです。

プロセス・10運営開始

ここから新体制での運営がスタートします。長い道のりではありますが、どれも欠かせないステップ。日本企業が海外M&Aを失敗してしまう要因として性善説を基本としていることや単一民族国家であることが挙げられます。いい人そうだから大丈夫と気を緩めず、ポイントごとにしっかりと確認していきましょう。