海外には日本とは違う規制やルールがあります。「郷に入れば郷に従え」というように、相手国にすんなりと馴染めるようあらかじめルールを知っておくことが大切です。ここでは、海外M&Aする際に気を付けたい規制についてお伝えしていきます。

■主要地域の規制について

アメリカ

人材育成のための機関が発達しており、M&Aを熟知している即戦力な人材が豊富なアメリカ。当然、国内外のM&Aも一般的な手段であり、年間60万社が売買されています。そんなアメリカは合衆国であり、州ごとに規制が異なります。また、会社についての法律は州法が担当しますが、公開企業については連邦法の規制が適用されるなど複雑です。さらに明文化されていないルールも多く、知らないと痛恨のミスとなることも!特に、TOBについては法上で定義されておらず、連邦控訴審裁判所の判断が一定ではない点は気になりますね。基本的にはTOBは避け、そのほかの形でM&Aを実施するよう大手のローファームも警告を鳴らしています。もう一つ、独禁法を守るため企業結合審査の審査が長引く傾向もみられます。この結果M&Aが遅延や中止となってしまう「独禁法リスク」に注意しましょう。ほかにも、重要なインフラと認定される分野には特別審査も必要となります。航空宇宙や金融、農業に公衆衛生とさまざまな分野があるので当てはまる場合は別途対策が必要です。

EU

ドイツは日本の市場との共通点も多く、比較的M&Aしやすい傾向のある国です。また、そのほかのEU諸国も大きな可能性や市場を持っていますが、ここでも合衆国のようにEU 自体の法令だけでなく加盟国ごとの法令を熟知する必要があるでしょう。多数の国にまたがったM&Aの場合、面倒が生じると敬遠するかもしれませんね。ですが、規定を満たしている企業であれば欧州委員会がワンストップの手続で審査手続きを行う「ワン・ストップ・ショップ原則」を取り入れているなど活動をサポートする体勢もみられます。とはいえ、注視するべきはTOBと独禁法です。TOBを行う場合、基本的には全株式を対象とするべしという規制があるのが大きな特徴。細部まで細かく規定があるためまずは確認してみるといいでしょう。また、フランス・ドイツ・イタリアでは非EU加盟国によるM&Aで技術などが流出することに懸念を抱いており、EU主導の審理体制を作る動きもみられています。EU加盟国との海外M&Aはじっくりと戦略を練る必要がありそうです。

中国

発展目覚ましい中国の企業は、海外M&Aも盛んに行っています。日本の「日興電機工業」や、EUの「ボルボ」「サーブ」を買収したもの記憶に新しいですね。ですが、その勢いが強すぎて、EUでは中国企業の買収の規制や監視を強める法案が不可欠との声明をだしています。そんな中国ですが、発展を見込んで進出する海外企業も多く、2002年にはWTOに加盟し法整備も急ピッチで進められています。欧米と同じように海外の投資者による M&A関連特別法や独占禁止法や新会社法、投資規制などもありますが、明文化されている規制は少なく分かりにいのが現状です。中国での海外M&Aを行う際は、慣例と合わせて必ず専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

東南アジア

マレーシアやタイ、シンガポールなど東南アジア諸国にも日本の企業は熱視線を注いでいます。タイは製造業であれば100%外資保有が可能ですが、放送事業や農業・木材加工・漁業・製塩・武器製造業など43事業では認められていません。タイ企業の資本の半数以上を外国人又は外国企業が保有している会社は外資企業となり制限の対象になります。シンガポールではそれほど厳しい規制はありませんが、銀行・保険などの金融系の企業や放送事業など国益に直結する事業については制限があります。マレーシアについては、国益に直結する事業に関しても外資参入を30%までは認めています。

明文化されていない規制に注意

当然明文化されているだろうと思っていると足元をすくわれます。中国だけでなく、法律にうるさいアメリカにもこの傾向があるため、海外M&Aを検討する際はその国の事情に精通しているエキスパートに相談することが不可欠。特に金融やマスメディアなどその国の利益を左右する事業ほど規制は厳しく、よく対策を講じる必要があるでしょう。日本では規制緩和後にM&Aが一般的となり、国内の例や海外での例も増えています。これからもグローバル化の波に乗ってその傾向が強まって行くことは間違いありません。この動きは中小企業にも波及しており、大手以外の海外M&Aを仲介する業者もみられるようになりました。これからの経営について思うところがある、国内市場に行き詰まりを感じているというのであれば海外M&Aを選択するのも1つではないでしょうか?