自社の販路を拡大する、日本にない技術を獲得するなどの目的で、海外企業とのM&Aを考えている企業も多いことでしょう。経済先進国とのM&Aはもちろんですが、成長著しいアジアの国々をターゲットにするというのも得策です。日本からも近く、おなじアジア人として親近感を覚えるというのも一因ですが、やはり国ごとに習慣や概念が異なり一筋縄ではいかないこともあるでしょう。そこで、ここでは海外進出を考えている方へ向けて現在注目のアジアM&A事情についてお伝えしていきます。

アジアが注目される訳とは

1990年代は通貨危機など危うかったASEAN諸国ですが、2000年頃から安定をみせており、世界経済の平均を上回る成長を遂げています。向こう5年はプラス5%の成長が続くと予想されています。一方、おなじアジアの中国は少々減速が予想されていますが、それでも予想は+4~5%。こちらも依然として魅力的な市場ということができるでしょう。また、

  • 各国の強みがそれぞれ異なる
  • 富裕層だけでなく中間層が厚くこれからの成長が見込まれる
  • ガスや原油、レアアースなど天然資源が豊富

といった特徴がみられ、成長が一段落した日本市場にはない魅力に溢れています。2015年にはマレー半島を中心としたAFTAの関税撤廃がほぼ完了しており、緩やかに経済が統合しつつあるという点も手堅いとされる要因の1つ。EUのように後々問題になるのではという懸念もありますが、急いで統合したEUと異なり時間をかけてじっくりと現実的なペースでの統合を目指しているのでリスクは低いと考えられています。ASEAN諸国はもう安い労働力を求める場ではなく、事業を成熟させる土壌となる地域であり、海外進出を考えるなら検討するべき地域といえるでしょう。

各国の事情

ラオス

*GDP成長率・8.3%
*名目GDP・159億ドル
*人口・6.4百万人

市場としては小ぶりですがASEAN諸国一のGDP成長率は見逃せません。

  • 労働賃金が安い。
  • ASEAN諸国の中心に位置している。
  • 2016年より改正投資奨励法や経済特区法など外国からの投資がしやすくなる環境を整えている

また、貧困地への進出や各種インフラの整備が追いついていない地域への進出は一定の条件をクリアすると10年間法人税が免除されるといった独自の特典もみられます。

インドネシア

*GDP成長率・6.2%
*名目GDP・9,323億ドル
*人口・244.0百万人

ASEAN諸国最大の人口を誇り労働力の確保は容易であり、物価も安いためM&Aの費用も手頃。ですが、ASEAN諸国では1位、世界でも16位の巨大な経済規模と注目を集めるのも納得の条件が揃っています。外資優遇税制などもあり、外資の進出を誘致している一方、宗教的なリスクがあることも念頭に置かねばなりません。イスラム教が多数を占める地域なので、原料にハラルを使うことを徹底する、金曜日や断食時期は柔軟な対応をするなど日本とは全く違った注意点があります。また、過激派によるテロが起こる地域もあり、大都市でも油断できません。さらに、M&Aの手続きがほかの国に比べて煩雑であり、精通した仲介業者でも時間がかかる場合があります。リスクもありますが、マッチングが成功すればリターンも大きく、検討する価値は十分にある国といえるでしょう。

マレーシア

*GDP成長率・5.6%
*名目GDP・2,964億ドル
*人口・29.5百万人

成長率は比較的落ち着いていますが、高度な技術を扱う企業も多く先進国への仲間入りする日も近いといわれています。また、日本など東方の国を手本とするルックイースト政策を1981年より進めており、親日家の多い国であり国民の教育レベルが高いのも特徴です。日系企業の進出も進んでおり、衣食住ともに日本から赴任する社員がいる場合でも、生活しやすい環境といえるでしょう。近年では加藤産業が食品や日用品を扱う小売大手のLein Hing Holdingsを買収するなど、海外M&Aも盛んに行われています。マレーシアに精通した仲介業者も増えており、安定的な海外M&Aを望む場合はチェックするのもおすすめです。

シンガポール

*GDP成長率・1.3%
*名目GDP・2,970 億ドル
*人口・5.4百万人

世界中から企業や人が集まるシンガポールは早くからアジアと世界をつなぐハブの役目を担ってきました。ビジネス環境は抜群で、金融やメディア以外には出資制限もなく、法人税は最大でも17%!税率はかなり優遇されていますが、タックスヘイブン税制の対象となる20%以下なので注意が必要です。また、ほかのASEAN諸国よりも物価や人件費は高く、光熱費も海外に依存しているため高額とアジアならではのメリットを享受できない部分もあります。

中国

*GDP成長率・6.7%
*名目GDP・11.2兆ドル
*人口・1,382.7百万人

圧倒的な人口と国土、意欲を持った国中国。海外M&Aも積極的に行っており、自動車会社や家電メーカーなど大手メーカーを買収していることでも知られています。2017年は金額にして1214億ドルものM&Aが行われましたが、これでも前年比42%ダウンと聞けば驚く方も多いでしょう。中国における外国資本のうち約10%は日本企業と身近な存在です。リスクも大きいですが、それ以上のリターンを見込んで海外M&Aを希望する企業は後を絶ちません。