近年M&Aは、上場企業のような大企業から中小企業や小規模事業者にまで広がっています。このM&Aは、いろいろな面から捉えることができます。たとえば、国内企業同士で行う国内M&Aと、国内企業と海外企業との「クロスボーダーM&A」とか、「アウトバウンドM&A」とか呼ばれる海外M&Aです。
 これらいずれのM&Aとも、現在盛んに行われています。国内M&Aが増えている理由としては、主に中小企業の事業承継の一環として行われるものです。これは急速な少子高齢化による後継者不足の効果的な手段としてM&Aが注目されていることによります。
 一方、海外M&Aが盛んになってきた理由としては、バブル崩壊から30年経つ中で、慢性的な不況から海外市場に企業が活路を見出そうとしたこと、そして国内市場の場合と同様、少子高齢化によります。こちらは少子高齢化による人口減少、多死社会から国内市場が縮小していることによります。
 今回は、このような我が国の構造的な問題が原因で急激に増えている、日本企業による海外企業のM&Aについて解説していきたいと思います。

急増している日本企業による海外企業のM&Aとはどのようなものか

 国内M&Aとともに近年急増している海外M&Aですが、同じM&Aでも国内企業同士のM&Aに比べて色々な面で異なっています。
 では、クロスボーダーM&Aなどとも呼ばれる、日本企業による海外企業のM&Aについて見ていきましょう。

決して高くない日本企業による海外企業M&Aの成功率

 元来、M&Aディール(取引)は、成功する割合は高くはなく、M&A先進国である欧米諸国でも、成功率は5割程度です。我が国のM&Aではよくて3割といったところです。
 これが日本企業による海外企業のM&Aともなると、双方企業の経営システムや言葉、経営慣行、そして価値観などの相違から、成功する割合はさらに低くなってしまいます。
 このような日本企業による海外企業のM&Aの成功率が低い原因としては、主に次のようなものがあります。

買うべきではない企業を買ってしまう

 本来買うべきでない企業を、他の企業も海外M&Aを行っているからと軽い動機で買ってしまう、海外M&Aで失敗する代表的なパターンです。なぜ海外企業をM&Aで買うのか明確な戦略上の目的なく行うため、売買案件についての十分な検討なく飛びついたり、デューデリジェンスによる詳細な調査・分析もしないため、とんでもない企業をつかんでしまう結果になってしまうのです。

買う必要のある企業であるが、法外な買収金額となってしまう

 明確なM&A戦略に基づき、買収企業について検討したにもかかわらず、想定していた金額よりかなり高い買収代金を支払ってしまい、M&A後、支払った金額以上のキャッシュフローが得られずに失敗してしまうパターンです。これは海外企業を買収することでもたらされるシナジー効果に過度の期待をしたために起こる、いわゆる「シナジーの罠」にはまってしまうことで起こる失敗例です。

買う必要のある企業を適正価格で買収するがPMI(事業統合)でつまずく

 PMIでつまずき失敗するパターンは、国内のM&Aでもよく見られるものですが、海外のM&Aでは、特にPMIについての重要性と海外 PMIの特殊性を理解しておかなくてはなりません。一般的にM&Aは成約に至るまでは粛々と各々のプロセスを行いますが、成約してしまうと気が緩んでしまい、次に何をやってよいのかわからなくなってしまうことが多々あります。
 言葉も商習慣も異なる海外M&AのPMIでは、国内のPMI以上に統合のための準備が重要になってきます。M&Aの進行段階でPMIを進めていくスタンスを決める必要があります。本社の経営スタンスをとるのか、といった最も基本的な部分でつまずいてしまい、その後のPMIがうまくいかなくなるパターンです。

急増する日本企業による海外企業のM&Aで失敗しないためのポイント

 国内企業とは大きく異なる海外企業をM&Aで買収するには、膨大な時間と労力、そして多額の買収資金を必要としますから、少しでも失敗のリスクを下げたいものです。
 そのためには、上記のような失敗パターンに陥らないための事前対策が重要になります。事前対策を講じる上でのポイントとしては、国内M&Aと同様に明確なM&A戦略上の目的を設定することが第一です。
 次に、自社の戦略手法と対象となる海外企業の経営手法や経営環境などの違いを認識し、相手企業へ配慮することです。たとえば、世界的に見れば特殊な「日本型経営」を何が何でも押し付けるようなことはせず、できる限り現地の人たちを経営陣に入れたり、現地の経営コンサルタントの支援を仰いだりするといったことです。
 また、「買収案件」を見送るような買収金額の上限を設定したり、買収案件をあらかじめ決めておき、必要以上の時間、金、労力を使うことのないようにすることも重要です。

 近年急増している、日本企業による海外企業のM&Aによる買収について、失敗するパターンや失敗しないためのポイントを中心に述べました。