近年M&Aは、上場企業のような大企業から中小企業小規模事業者にまで広がっています。このM&Aは、国内企業同士で行う国内M&Aと、国内企業と海外企業との「クロスボーダーM&A」とか、「アウトバウンドM&A」とか呼ばれる海外M&Aとに分けることができます。
 これらいずれのM&Aとも、現在盛んに行われています。国内M&Aが増えている理由としては、主に中小企業の事業承継の一環として行われるものです。これは急速な少子高齢化による後継者不足の効果的な手段としてM&Aが注目されていることによります。
 一方、海外M&Aが盛んになってきた理由としては、一向に出口の見えないデフレ等による不況から、海外市場に企業が活路を見出そうとしたこと、そして国内市場の場合と同様、少子高齢化による人口減少から国内市場が縮小傾向にあることによります。
 このような我が国の構造的な問題が原因で、急激に増えている日本企業による海外M&Aですが、今回は、この海外M&Aが失敗に陥りやすい理由について解説します。

海外M&Aが失敗に陥りやすい理由について

 このように、人口減少による国内市場の縮小の中で、多くの日本企業が国内投資を抑えるとともに、積極的な海外投資を行っています。そのため、「クロスボーダーM&A」とか「アウトバウンドM&A」などと呼ばれる日本企業による海外企業のM&Aは増加傾向にあります。
 今までM&Aには無縁だった中小企業や小規模事業者までもが、海外M&Aを行うようになっています。ただ、海外M&Aはその特殊性から思ったほど成功率は高くありません。我が国を代表する上場企業でも、海外M&Aに失敗し、多額の損失を抱えることも少なくありません。
 では、なぜこのような海外M&Aの失敗リスクが高いのでしょうか。ここではその理由について検証してみたいと思います。

海外M&Aが失敗するパターン

 海外M&Aが失敗するリスクはいろいろありますが、大きくパターン化すると次のような3つに分けられます。

①買うべきでない会社を買ってしまう

 本来買うべきではない会社に、手を出して失敗するパターンです。これは、海外M&Aを行う戦略上の目的が設定されていないことに起因します。戦略上の目的が明確でないことによるM&Aの失敗は、国内M&Aを含め典型的な失敗パターンですが、海外M&Aの場合、M&Aの対象が海外企業という特殊性から、国内企業を対象とするよりも失敗リスクは高まります。そういった意味では、国内M&AにおけるM&A戦略目的の設定の明確化よりも難しいといえます。
 海外M&Aの戦略目的を設定する上でのポイントは、国、人種、言葉、文化そして商習慣などが大きく異なる海外企業を、M&A後どのように運営するかという統合後の経営スタンス、とりわけ経営陣を誰にするかといった人事面での配慮が必要になることです。
 我が国の企業が成功した背景には、「終身雇用」、「年功序列」、「労働流動性の低さ」という特殊な経営システムにあります。海外M&Aをする日本企業の多くが、こうした経営システムをそのまま海外企業に導入する傾向があります。しかし、海外では労働流動性が高く、一般従業員だけでなく経営陣も、より条件のよい企業に転職するのが一般的です。こうしたことを考えず、いきなり日本型の経営システムを行うところに大きな失敗リスクがあるのです。
 現地の経営陣の協力なくして、海外M&Aの成功はあり得ないという認識が不足しているように思われます。

②過度なシナジー効果を期待する

 海外M&Aによるシナジー効果を過度に評価してしまうことによる失敗のパターンです。国内M&Aへの限界から海外M&Aを行う企業が多いためか、M&Aによるシナジー効果に過度の期待をしてしまうのです。いってみれば「M&Aの罠」に陥ってしまうのです。
 買収する側は、M&Aによる統合(PMI)とその結果もたらされるシナジー効果、企業価値の創造などに、「のれん」といったものを上乗せして買収金額を決めます。ただ、この「のれん」はM&A後、数年で回収しなければなりません。本来の適正価格を大幅に上回る高額な価格で買収してしまうと、いつまでたっても回収できず、企業価値の増加も望めず、結果としてM&Aが失敗してしまうことになります。

③買うべき会社を適正価格で買収するが統合がうまくいかない

 これも一般的なM&Aの失敗パターンです。面倒なM&Aのプロセスが終わり、M&A契約が締結されると、気が緩んで次に何をすればいいか迷ってしまうというものです。
 この原因は、先の述べたM&Aに際して設定すべき明確な戦略上の目的が認識されていないということが、統合を実行する段階に至ってはっきり現れてしまうことによります。
 海外M&Aの統合では、最初のフェーズである準備期間が特に重要です。戦略設定時にある程度見通しを立てておいた統合後の経営スタンスや現地経営陣への対応を、PMIに際し確定しておかなくてはなりません。ここでつまずくと、コミュニケーション不足から自社の経営戦略や経営計画なども伝わらず、双方企業文化の融合といったことも望めません。
 その結果、所期のシナジー効果の発揮と継続的な企業価値の創造といった海外M&Aの目的も達成できず、失敗に帰すということになるのです。

 このように海外M&Aが失敗するパターンは大きく3つあります。海外M&Aの失敗リスクを減らし、少しでも成功する割合を高めるには、これらへの対策が重要です。