M&Aというディールの歴史は古く、19世紀中頃にまで遡ります。以前は大企業を中心に行われていましたが、最近では、上場企業のような大企業だけでなく中小企業や小規模事業者、そして、個人事業主にまで広がっています。このM&Aは、いろいろな面から捉えることができます。例えば、M&Aスキームの面から、合併のように完全に企業同士を統合させひとつの企業にしてしまうものと、買収のように双方の企業が支配従属関係にありながらも存続するといった分け方があれば、売買対象企業の面から、国内企業同士で行う国内M&Aと、国内企業と海外企業との「クロスボーダーM&A」とか、「アウトバウンドM&A」とか呼ばれる海外M&Aといった分け方もあります。
 現在、国内M&A、海外M&Aのいずれも盛んに行われています。国内M&Aが増えている理由としては、主に中小企業の事業承継の新たな手段として行われるようになったというものです。これは急速な少子高齢化による後継者不足の効果的な手段としてM&Aが注目されていることによります。
 これに対して、海外M&Aが盛んに行われるようになってきた理由としては、バブル崩壊からの慢性的な不況のなかで、成長著しいアジアなどの海外市場に企業が活路を見出そうとしたこと、そして国内市場の場合と同様、少子高齢化による人口減少などから国内市場が縮小していることによります。
 ただ、盛んに行われている割には、海外M&Aの成功率は高くありません。そこで今回は、このような我が国の構造的な問題が原因で急増している、日本企業による海外M&Aを成功させるためのポイントについて詳しく見ていきたいと思います。

日本企業による海外企業のM&Aを成功させるポイント

 上記のように、近年における急激な少子高齢化と人口減少により国内市場は縮小傾向にあります。こうした中で日本企業では、国内市場への投資を絞り、海外への進出を積極的に進めています。そのため、「クロスボーダーM&A」とか「アウトバウンドM&A」と呼ばれる日本企業による海外企業のM&Aも増加しています。
 今まで海外企業のM&Aには無関係と思われていた中小企業や小規模事業者までもが、海外M&Aを行うようになってきました。
 ただ、こうした海外M&Aは、国も人種も言語も、そして文化も違う上に、日本企業とは大きく異なる経営慣行や経営システムを持つ海外企業を対象としているため、独特の難しさがあります。我が国を代表する大企業でも、海外企業をM&Aにより合併・買収しようとした結果、巨額の損失を計上するといったことも少なくないのが実状です。
 では、どうすればクロスボーダーM&A、あるいはアウトバウンドM&Aといわれる海外M&Aを成功させることができるのでしょう。この点について述べてみたいと思います。

海外M&Aを成功させるポイントその1–M&A後の経営を考え、十分な準備をする

 国内M&Aでも最重要事項ですが、M&A後の経営をどうするのか、すなわちPMI(事業統合)の方針を決めておくこと。そのためにはM&Aに先立ち明確な戦略上の目的を設定しておくことです。
 海外M&Aでは、こうした準備をしておくとともに、M&A後の経営スタンス、そして、実際に経営を行う経営陣をどうするかといった視点が極めて重要になってきます。自社の経営陣とするのか、現地の人たちに委任するのか、あるいは折衷案とするのか、事前に決めておくことです。
 全社戦略や主要人事、報酬など重要事項は自社が行い、通常の業務は可能な限り現地スタッフに任せるといった権限の委譲が重要になります。

海外M&Aを成功させるポイントその2–現地スタッフへの配慮

 海外企業では我が国の企業と違い、労働流動性が高いのが一般的です。そのため、従業員だけでなく経営陣も一定期間経験を積むと、よりよい報酬や労働条件を求めて転職してしまいます。M&A後も3〜5年ほどの期間経営陣にとどまってもらうには、金銭的インセンティブとともに、モチベーションを高める人事評価その他の非金銭的インセンティブを与えるなどの配慮が必要です。また、現地の経営コンサルタントを採用し、これらの経営陣を支援するといったことも有効な方法でしょう。

海外M&Aを成功させるポイントその3–海外M&AにおけるPMIの重要性の認識

 海外M&Aといった特殊性から、国内M&AにおけるPMIとは異なる視点からPMIを捉えることが重要です。言葉も文化も人種も異なり、商習慣なども大きく違う海外企業をM&Aにより統合するには、国内M&A以上にPMIの最初のフェーズである準備期間での対策が必要になります。
 どのような統合及びその後の経営スタンスをとるのか、その際の人材の確保はどうするのか、そして世界的に見ても珍しい我が国の企業文化とどう融合させるのか、といったことを本格的なPMIに入る前に手当てしておくことが重要です。

 以上、日本企業が海外企業をM&Aにより買収する際のポイントについて見てきました。
国内M&Aなどの一般的なM&Aを行う上でのポイントを押さえた上で、海外M&Aを成功させるポイントも把握し、M&AのプロセスやPMIの各フェーズを行なっていくことが大切なことです。