M&Aの評価は、これを成約させられるか否かで決まるわけではありません。M&A取引(ディール)が完了したあと、PMIという事業統合によるシナジー効果の発揮と、継続的な企業価値の創造が実現して、はじめてM&Aは成功したとの評価が得られるのです。
 これは国内企業同士のM&Aの場合も、国内企業が海外企業を対象として実施する「クロスボーダーM&A」という海外M&Aの場合も同じことがいえます。
 特に、海外M&Aの場合は、国内企業とは言葉も、経営環境も大きく異なる海外企業を合併・買収するわけですから、国内M&Aの場合とは違ったPMIへの対応が必要です。国内M&Aでもプロセスを進めることに集中し、M&Aが成約してとりあえず一連のプロセスが終了すると安心してしまい、本格的なM&Aの目的であるPMIによるシナジー効果の発揮と企業価値の創造というところにまで頭が回らない傾向がありますから、海外M&AにおけるPMIでは、特に配慮が必要になってきます。
 そこで今回は、このようなPMIの重要性を再認識するとともに、海外M&A成功のためのPMIを進めていく上でのポイントについて述べてみたいと思います。

海外M&Aを成功させるPMIのポイントについて

 最終的なM&Aの成功は、効果的なPMIの実現です。そのためには、PMIの意義やM&Aにおける位置付けなど、PMIの重要性を十分認識することですが、海外M&Aを成功させるためのPMIについては、その特殊性についての認識も必要となってきます。
 このような認識を前提とし、PMIを進めていく上でのポイントを押さえておくことで、海外M&Aを成功させることができます。では、以下押さえるべきポイントについて見ていきます。

M&Aの目的、戦略、計画などの伝達

 国内企業では、従業員から経営トップへの稟議というものが見られますが、海外企業ではトップダウンによる意思伝達が原則です。M&Aによる買収後、直ちに被買収企業の経営陣や従業員に対して、自社のM&Aの目的やその経営戦略などを、簡単明瞭に伝達することです。これにより、経営陣から従業員までもが、今後の新体制下の方針がわかり、安心して業務につけます。

経営陣やキーパーソンへのインセンティブの付与

 買収後の業務を行ってもらう被買収側企業の経営陣や、キーパーソンとなる従業員にとどまってもらい、また従来以上の業務を行ってもらうため、金銭、非金銭両面からのインセンティブを提示すること経営陣等へのモチベーションアップをはかることです。

内部管理体制(コーポレートガバナンス)の確立

 国内M&Aでは、内部の管理体制はひとつあればよいのですが、海外M&Aの場合、自社直結の内部管理体制と海外事業の実情に合わせた「ローカルルール」のようなダブルスタンダードの内部管理体制を構築したほうがPMIはうまくいくことが多く見られます。

買収企業と被買収企業との良好な関係

 これは国内M&Aにもいえますが、先のダブルスタンダードのコーポレートガバナンスを採用する海外M&Aでは、特に配慮する必要があります。国内の従来からのコーポレートガバナンスをいきなり押し付けたり、逆に海外企業に丸投げしてしまい、統制が乱れてしまうことも考えられます。双方をバランスよく管理するには、まず良好な信頼関係を築くことです。
 そのためには、国内企業からやる気のある若手社員を現地に派遣したり、現地での有能な人材を重用するといった人事面での配慮もまた重要なことです。

買収企業と被買収企業との企業文化の融合

 上記のような一連のポイントがクリアできたら、最後に買収企業・被買収企業双方の企業文化を融合させることです。これができてはじめて、海外M&AにおけるPMIの成果が出てくることになります。双方企業文化の融合には、何といっても国内企業の文化を海外の文化に合わせるくらいの姿勢が大切です。時として日本の企業文化、企業風土といったものは国際基準から大きく乖離している、いいかえれば「ガラパゴス化」しているくらいの認識が必要です。

 以上、「クロスボーダーM&A」、「アウトバウンドM&A」などといわれる、海外M&Aを成功に導くPMIのポイントについて解説しました。